2019年7月19日(金)、シモン・ゴールドベルクの命日の日、東京藝術大学第6ホールにてSPレコードコンサートが開催された。附属図書館所蔵の「クリストファ・N・野澤SPレコードコレクション」と音楽学部総合研究センターの「シモン・ゴールドベルク文庫」が協力し合って行われるレコードコンサートは今回で3回目であり、前回に引き続き「シモン・ゴールドベルク文庫」の中からゴールドベルク自身の書き込みのある楽譜資料をスクリーンに映し出しながらのレクチャーコンサートとなった。
演奏会は「第2回 野澤コレクションでたどるヴァイオリン演奏の系譜〜シモン・ゴールドベルクを中心に〜」と題され、ゴールドベルクの薫陶を受けた澤和樹学長の解説を交えながら、司会を務められた楽理科の大角欣矢教授をリーダーとする野澤コレクションを活用してのヴァイオリン演奏史研究プロジェクトの成果報告の一環として行われたものでもあり、ゴールドベルクを中心に種々のヴァイオリニストとの聴き比べなどが行われた。異なる演奏家の、同じ曲の同じ部分の音源をコンピューターに取り込んで解析、比較することによって、今までは感覚的に語られてきたヴァイオリンの演奏様式の違いが一部とはいえ、客観的に目に見える形で確認することができた。先生方の解説の中でも、「一般的にゴールドベルクの演奏はよく端正だと言われますが、他のヴァイオリニストと比較したスペクトログラムをみるとやはり、そのことがはっきりと現れていますね」という言葉がとても印象的に聞こえた。
またホワイエでは、音楽総合研究センター「ゴールドベルク文庫」所蔵のパネルや、関連資料、楽譜なども展示され、熱心にのぞきこむ方の姿が多くみられた。(記:饗庭裕子)