東京:幻戯書房 2010年4月12日発行
1992年カーティス音楽院で行われた室内楽の講座を箴言集としてまとめ、原語の英語と日本語訳を、左右のページに対訳の形で載せました。
《20世紀の巨人 シモン・ゴールドベルク》にもこの箴言集の日本語訳は掲載しましたが、読者にとって、オリジナルの英語もあった方がニュアンスがより直接に伝わるのではないかと考え、この巻では左右ページに英日対訳にして載せています。
この項にはゴールドベルクが1988年、89年、93年に、桐朋学園大学に於いて行った、計7曲8回の室内楽の公開講座の全記録が記載されており、加えて実況録画のDVDが添えられています。
通訳は毎回山根美代子が務めました。
本には、各講座でゴールドベルクが語った総論的なこと、解釈、表示記号のその個所に於ける意味などの他に、一つ一つの具体的な細かい注意事項が全て譜例と共に記されており、加えて実況録画のDVDが添えられているので、ゴールドベルクが実際に弾いてみせる音を聴き、目で見ながら読むことができるため、語られていることが言葉としての観念論にならず、実体験の如く体に入ってくることでしょう。
1988年6月
16日 モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 K.380
17日 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第7番 ハ短調 Op.30-2
18日 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調 Op.78
1989年6月
28日 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 Op.100
29日 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 Op.24《スプリング》
30日 ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調
1993年6月
15-16日 モーツァルト:弦楽五重奏曲 ト短調 K.516
この項ではゴールドベルクの手紙6通が紹介されています。(敬称略)
1. | 小林健次宛 | 1962年8月19日 | ドゥブロヴニクにて |
1987年12月27日 | ニューヘイヴンにて | ||
2. | カーティスの学生宛 | 1986年4月18日 | ニューヘイヴンにて |
3. | グロリア宛 | 1987年7月20日 | ニューヘイヴンにて |
4. | 山根美代子宛 | 1988年7月4日 | ニューヘイヴンにて |
5. | 小林健次宛 | 1982年6月30日 | ニューヘイヴンにて |
DVDでゴールドベルクが実際に弾いてみせる音を聴き、姿を見ながら、本では一つ一つの箇所の注意事項が譜例と共に示されているので、あたかもその講義の場に居るかのような体験ができるでしょう。
ちなみに、ヴァイオリンを弾いているゴールドベルクの動画映像は、おそらくこのDVDが現存する唯一のものであり、特に、講義の後に、ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタを美代子のピアノと共に全曲通して演奏をしている貴重な映像も収められています。
この「講義録」は、「20世紀の巨人シモン・ゴールドベルク」(生涯編)の続編であり、音楽を学ぶ次世代の方々へのゴールドベルクからのメッセージが、「箴言」「講義録」「ゴールドベルクの手紙」の3部に分かれて載っています。
本書を通じて、編者であるピアニスト山根美代子は、ゴールドベルクの音楽に取り組む姿勢とともに、彼が示した楽譜の真の読み取り方、実際の確かなテクニックの探求などを世に伝えたかったのです。
8回の講座の講義録に実況録画のDVDが付けられており、目で見、耳で聴き、ゴールドベルクが弾いてみせるお手本が見られるようになっています。