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シモン・ゴールドベルク関連の出来事
2017年

特別展示「シモン・ゴールドベルクの世界」

東京藝術大学音楽総合研究センター

シモン・ゴールドベルクの世界

2017年11月23日から28日まで東京藝術大学音楽学部音楽総合研究センター(2017年度よりそれまでの「音楽研究センター」から改称された)にて、藝大フレンズ賛助金助成事業として特別展示「シモン・ゴールドベルクの世界」が開催された。2014年に開催された「シモン・ゴールドベルク資料展」の第二弾となった今回の特別展示は、それ以降特に整理が進んだ写真・書簡類を多く含めながら、常に真摯に音楽と向き合い、激動の20世紀を生きた稀代のヴァイオリニスト、シモン・ゴールドベルク Szymon Goldberg (1909-93)の世界に迫ろうとするもので、音楽家ゴールドベルクを紹介するにあたって欠かすことのできない、彼自身の書き込みねある楽譜や録音資料などにも十分な重きが置かれていた。

総数6,500点以上の「ゴールドベルク文庫」資料の中から、ベートーヴェン、バッハなどの楽譜5点の他、洋書6点、写真・絵はがきなどを厳選して展示ケースに陳列し、併せてゴールドベルクが1936年初来日の際に、指揮者・近衞秀麿に求められてリリー・クラウスと共に記した貴重なサイン帖(近衞音楽研究所所蔵)も展示されていた。また大型の年表パネルと5枚のパネルが作成され、写真資料、書簡、手書きのメモなどからゴールドベルクの交友関係、音楽観などを浮き上がらせたほか、ゴールドベルクの自宅写真(東京、アメリカなど)をスライドにて流しながら、遺品として寄贈された飾り棚に31点の置物・調度品、3点の美術品を並べ、自宅の雰囲気を味わえる一角が設けられた。

さらにゴールドベルクによる書き込みを直に手に取って見られるよう複製楽譜4点が展示され、音響資料としては15種類の音源資料(うち1点は書き込みの異なる2種類の楽譜を複製して、読み比べられるよう工夫)、3種類の映像があり、その他新旧のアルバムの中から作成した2種類のスライドショー展示、ゴールドベルク旧蔵美術品の多くが収められている富山県美術館の「シモン・ゴールドベルク コレクションルーム」紹介コーナー、ゴールドベルクの妻でピアニストの山根美代子について取り上げた展示など、さまざまな角度からゴールドベルク文庫の紹介がなされていた。

会期の初日と最終日には、附属図書館ご協力の下、SPレコードコンサートが開催され、大変多くのお客様にご来場いただいた。手巻きの蓄音機を通じて伝わるゴールドベルクの演奏の素晴らしさはもちろんのこと、司会の大角欣矢教授、ゴールドベルクに直接教えを受けた澤和樹学長から大変興味深いお話が聞け、加えて各回1-2曲ずつ、ゴールドベルクの書き込みがある楽譜をスクリーンに映して、楽譜を目で追いながらレコードを聴くという試みがあった。とくに澤学長からはヴァイオリニストとしての視点から書き込みの内容についての解説があり、演奏・研究の両方の側面を取り入れた藝大らしい企画になったとの高評価を得ることができ、好評のうちに幕をおろした。

単に世界的に活躍した音楽家のコレクションというだけにとどまらず、演奏家研究、ヴァイオリン奏法の研究といった学問的、演奏家的観点からも、今後いっそうの貢献が期待される「シモン・ゴールドベルク文庫」の資料が、これからも多くの方々に活用され、さらに文庫で所蔵していない埋もれた資料が、各分野の情報を含め少しずつでもセンターに集約され、発展していくことを望みたい。

資料展の展示資料一覧

SPレコードコンサート・プログラム